「昔と比べて、
だんだんお肉を食べたいと
思わなくなってきた。
でも、たんぱく質をとらないと
筋力が落ちると聞いて、
がんばって食べています。」
お客さまからよく伺うお話です。
「たんぱく質」と聞くと、
「牛、豚、鶏」などの
動物性たんぱく質を
イメージされる方が多いですよね。
もちろん、たんぱく質には
「植物性たんぱく質」もあるのですが、
「豆腐を食べて筋力維持!」というイメージは、
あまりありません。
はたして、
植物性たんぱく質で
筋力は維持できるのでしょうか?

結論から言えば、
植物性たんぱく質でも筋力の維持は可能です。
ただし、
知っておきたいいくつかのポイントがあります。
早速見ていきましょう!
1. 筋肉は「アミノ酸の設計図」で作られる
筋肉はたんぱく質でできていますが、
その正体は20種類のアミノ酸の組み合わせです。
このうち、体内で合成できない9種類は
「必須アミノ酸」と呼ばれ、
食事から摂取する必要があります。
ここで重要なのが、
アミノ酸スコアという考え方です。
・動物性たんぱく質:ほぼ100(バランスが良い)
・植物性たんぱく質:種類によって偏りがある
例えば、大豆は比較的優秀ですが、
穀物やナッツ単体では
不足するアミノ酸が出てきます。
2. 筋肉合成のスイッチは「ロイシン」
筋肉を維持・合成するうえで、特に重要なのが
ロイシンというアミノ酸です。
ロイシンは、筋肉合成のスイッチ(mTOR)を入れる役割を担っています。
植物性食材でロイシンが多く含まれるのは、
大豆・大豆製品・・・植物の中ではロイシンの含有量がトップクラス!
レンズ豆・ひよこ豆などの豆類・・・大豆ほどではないが、安定した供給源
ナッツ類(特にピーナッツ・アーモンド)・・・脂質が多いので摂りすぎには注意
などですが、一般的に
・動物性たんぱく質:ロイシン含有量が高い
・植物性たんぱく質:やや少ない
といえます。
そのため、植物性のみで構成する場合、
同じ量でも筋肉合成効率がやや落ちる
とされています。
3. では、植物性では不利なのか?
答えは、「工夫次第」です。
研究では、
・総たんぱく質量を十分に確保する
・複数の植物性食品を組み合わせる
この条件を満たせば、
動物性と同等レベルの
筋力維持が可能とされています。
4. 実践的なポイント
植物性たんぱく質で筋力を維持するためのポイントは、以下の3つです。
〇 量をやや多めにする
植物性中心の場合、
体重1kgあたり1.0〜1.2g以上を
目安にすると安定します。
体重50kgの方であれば、
1日に50~60gということになりますね。
厚生労働省が発表している基準(約0.8g/kg/日)
は、あくまで最低限の目安であり、
筋力維持や植物性中心の食事では、
1.0〜1.2g/kg/日程度が現実的とされています。
〇 組み合わせる
単品ではなく、組み合わせることが重要です。
例:
大豆 × 米
豆類 × 穀物
ナッツ × 豆 など
この工夫によって、アミノ酸の偏りを防げます。
5. 1日の具体的な食事モデルは?
ここでは、体重50kgの成人が 、
どのような食事内容にすれば
1日の目標たんぱく質(50〜60g)を
確保できるか、見てみましょう。
食事の中心を担う、
昼食と夕食の2食で構成した場合は、
こんな食事内容になります。
【昼食】(約25〜30g)
・ごはん:1杯(150g) → 約4g
・木綿豆腐:半丁(150g) → 約10g
・納豆:1パック → 約8g
・味噌汁(豆腐+わかめ) → 約3g
→ 合計:約25g
【夕食】(約30〜35g)
・ごはん:1杯(150g) → 約4g
・厚揚げ1枚(150g) → 約15g
・豆のサラダ(ひよこ豆・レンズ豆):小鉢1杯(100g) → 約8g
・野菜のおかず(副菜) → 約2〜3g
→ 合計:約30g
これで、1日合計が約55g前後になります。
どんな印象をお持ちになりましたか?
年々食が細くなってきた…という方には、
少し量が多く感じるかもしれませんね(厚揚げなんて1枚ですし)。
それでは、ここで助っ人を登場させましょう。
助っ人とは…魚介類です。
牛、豚、鶏の肉は
あまり食べる気がしないけど、魚なら!
という方はいらっしゃるかと思います。

実は、魚介類を選択肢に入れるだけで、
「筋力維持のためのたんぱく質摂取」
の難易度は一段下がります。
魚介類の追加で、
たんぱく質密度とロイシン量が
一気に上がるためです。
それでは、
植物性たんぱく質+魚介類の
食事モデルを見てみましょう。
【昼食】(約25g)
・ごはん:1杯 → 約4g
・焼き魚(サバ or 鮭):1切れ(80〜100g) → 約18〜20g
・味噌汁(豆腐入り) → 約3g
→ 合計:約25g
【夕食】(約30g)
・刺身 or 魚料理:100g → 約20g
・冷ややっこ:半丁(150g) → 約10g
・野菜のおかず+少量のごはん → 約3〜5g
→ 合計:約30g
これで、1日の合計が約55g前後。
少しハードルが下がったのではないでしょうか?
まとめ
植物性たんぱく質でも、筋力は維持できます。
ただし、それにはある程度の量を確保したり、
組み合わせてアミノ酸バランスを良くしたり、
といった工夫が必要です。
ムリに動物性たんぱく質を
摂らなくても良いのはいいけれど、
もともとそんなに量を食べられないし…
と新たな課題を抱えてしまった方も
いらっしゃるかもしれませんね。
まずは、
自分は今どれくらいのたんぱく質を
摂る必要があって、
それを無理なく摂っていくには
どの食材を選ぶべきか。
考える機会を持つことから始めてみましょう!
参考文献
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
・Gorissen SHM et al., Am J Clin Nutr. 2018
・van Vliet S et al., Nutrients. 2015
・Norton LE et al., J Nutr. 2006
・Bauer J et al., J Am Med Dir Assoc. 2013
「腹八分目が健康に良い」
日本人なら誰もが聞いたことのある言葉です。
しかし、この言葉を少し深掘りしてみると、
意外に知られていないことがいくつもあります。
今回は「腹八分目」にまつわる、
ちょっと面白い 3つの雑学をご紹介します。
雑学①「八分目」に意味はあるの?
「七分目」でもなく、「九分目」でもなく、
「八分目」。
この数字には意味があるのでしょうか?
実際には、「八分目」に
科学的な基準があるわけではありません。
あくまで「食べ過ぎない程度」を表す目安、
というわけですね。
実は、他の国にも似た考え方があります。
例えば中国には、
「吃饭七分饱(食事は七分目まで)」
という言葉があります。
中国では「腹七分目」が
スタンダードなのかもしれませんね。
さらにイスラム文化には、
胃を三つに分けよ
三分の一は食べ物
三分の一は水
三分の一は空けておく
という教えがあります。
(胃の三分割法とでも言いましょうか…)
国によって数字は違いますが、
共通しているのは「満腹になる前に食事を終える」点です。
「食べ過ぎない」は、
人種や文化を超えた健康法なのかもしれません。

雑学②「腹八分目」はなぜ守れない?
「腹八分目」は分かっていても、
なかなか食べるのを止められない…。
なぜ、私たちは食べ過ぎてしまうのでしょうか。
理由の一つは、
満腹信号のタイムラグです。
食事をすると、
・胃の拡張
・消化管ホルモン
・血糖の上昇
などの情報が脳に伝わり、
満腹感が生まれます。
しかしこのプロセスには、
約15〜20分ほどの時間差があるとされています。
そのため早食いをすると、
満腹を感じる前に食べ過ぎてしまうのです。
また食欲には、
・グレリン(空腹ホルモン)
・レプチン(満腹ホルモン)
などのホルモンが関わっています。
しかし現代の食生活では、
・高カロリー食品
・睡眠不足
・ストレス
などの影響で、
満腹の感覚が鈍くなる(レプチン抵抗性)ことも
指摘されています。
現代人は、「腹八分目」が難しい環境に
生きているのかもしれません。

雑学③「腹八分目」は長寿地域「ブルーゾーン」共通?
世界には、
ブルーゾーン(Blue Zones)と呼ばれる
長寿地域があります。
(ダン・ビュイトナーら、
米国の研究者によって
注目されるようになりました。)
代表的な地域としては
・沖縄(日本)
・サルデーニャ島(イタリア)
・イカリア島(ギリシャ)
・ニコヤ半島(コスタリカ)
・ロマリンダ(アメリカ)
などがあります。
これらの地域の食生活を調べると、
いくつかの共通点が見つかります。
その一つが、食べ過ぎない食習慣です。
例えば沖縄には、
「ハラハチブー(腹八分)」という言葉があります。
またサルデーニャやイカリアでも、食事は
・野菜中心
・豆類中心
・適量の食事
という特徴があります。
長寿地域の食文化には、
「満腹まで食べない」という
共通点が見られるのです。

ここまで、「腹八分目」にまつわる
3つの雑学をご紹介してきました。
「腹八分目」はたんなる言葉に
過ぎないかもしれませんが、
(そしてそれを守り続けることは
至難の業ですが…!)
私たちは、
多くの気付きを得ることができるのです。
参考文献(参考資料)
雑学①:「八分目」に意味はあるの?
- 貝原益軒(1713)『養生訓』
- Fontana, L., & Partridge, L. (2015).
Promoting health and longevity through diet: from model organisms to humans.
Cell, 161(1), 106–118. - Willcox, B. J., Willcox, D. C., & Suzuki, M. (2007).
Caloric restriction, the traditional Okinawan diet, and healthy aging.
Annals of the New York Academy of Sciences, 1114, 434–455.
雑学②: 「腹八分目」を守れないのはなぜ?
- Cummings, D. E., & Overduin, J. (2007).
Gastrointestinal regulation of food intake.
Journal of Clinical Investigation, 117(1), 13–23. - Friedman, J. M. (2014).
Leptin and the regulation of body weight.
The Keio Journal of Medicine, 63(1), 1–9. - Blundell, J. E., et al. (2010).
The control of food intake: biological and psychological basis.
Philosophical Transactions of the Royal Society B, 365(1554), 2569–2581.
雑学③: 「腹八分目」は長寿地域「ブルーゾーン」共通?
- Buettner, D. (2012).
The Blue Zones: 9 Lessons for Living Longer From the People Who’ve Lived the Longest.
The Blue Zones - Buettner, D., & Skemp, S. (2016).
Blue Zones: Lessons from the world’s longest lived.
American Journal of Lifestyle Medicine, 10(5), 318–321. - Willcox, D. C., et al. (2014).
Okinawa: A model for healthy aging.
Gerontology, 60(6), 556–563.
「本当に気持ちのよいところです。」
知り合いの方のそんな言葉に惹かれて、
以前から気になっていた場所を訪れました。
北アルプスの麓、信州・安曇野にある
「ホリスティックリトリート 穂高養生園」です。
今回の旅の目的は、
「ギシギシ脳を、やわやわ脳にする」こと。
仕事のこと、子育てのこと、
今日の夕飯の段取り。
深刻な悩みはないけれど、
脳が常に走り続けて休めていない。
そんな日々が続いていました。
もともと、穂高養生園を知ったきっかけは、
寺山心一翁さんが書かれた
『がんが消えた―ある自然治癒の記録』
という本。
穂高養生園の開設後、
間もない時期からこの施設に長期滞在し、
温泉や森林ウォーク、マクロビオティックの食事で
健康を回復していった寺山さん。
1986年の誕生当時から
変わらない空間が待っていてくれそうで、
お盆休みになるのも待ち遠しく、
片道3時間の道のりを車で移動しました。

「誰にでも本来そなわっている
自然治癒力を高めることを
目的とした宿泊施設です。」
ホームページにそう書かれている通り、
ここが心と体を養生するための場所だよ、
と教えてくれる看板。
共同玄関で靴を脱ぎ、受付を済ませてから
ロッジを思わせる木のぬくもりのある部屋で
休んでいると、ほどなくして
食事の時間になりました。
(私だけかもしれませんが、
実は滞在中ほとんどスマートフォンの
電波が入らず、図らずして
デジタルデトックスができました^^ゞ)

マクロビオティックをベースにした
玄米菜食の食事。
普段は、肉も魚も食べる食生活なので、
旅行先では、普段よりちょっと贅沢な
肉魚料理を味わうのが常。
玄米菜食で満足感が得られるかな…?
と思ったのですが、
これが…驚くほど美味しい!
どの料理も味付けはシンプルなのですが、
かえって素材の味をしっかりと感じられます。
2泊3日の滞在中、
バラエティ豊かな
マクロビオティック料理を楽しめました。



毎回、食事が始まると、
調理を担当したスタッフさんが
皆の前でメニューの紹介をしてくれます。
材料の産地、調理方法、美味しい食べ方を
1品ずつ丁寧に説明されると、
いただいているこちらも、
それぞれの料理と丁寧に向き合いたくなる。
不思議ですね。
食事の時間は、宿泊者が思い思いの席で
(夏場ということもあり、テラス席も!)
ゆっくりと料理を味わう姿が見られました。
確かに肉や魚はないのですが、
自分でこれだけ多種類の野菜を
手間暇かけて料理するのは、到底無理。
それだけで、贅沢な時間でした。
一晩明けた朝は、8時20分から原生林散歩。
希望者が数台の車に分乗し、
穂高養生園から続く林道を
5~10分のぼっていくと、
有明山の麓に広がる原生林の入り口に着きます。
車を空きスペースに停めて、散歩スタート。



意外に本格的なトレッキングコースで、
普段歩きのスニーカーでは、
ちょっとおっかなびっくりな場所も。
ところどころに湧き水スポットがあり、
スタッフさんが「飲んでみてください」
と勧めてくれます。
持参した水筒に湧き水を汲んで、
養生園に帰ってから
ハーブ園のハーブを数種類入れたら、
信じられないくらい美味しい
ハーブウォーターができました。
そうそう、ハーブ園の話が後になりました。
養生園のハーブ園は、宿泊棟のすぐそばにある
小高い10メートル四方の場所で、
訪問した時期には
「これはただの草?それともハーブ?」
というほど盛大に夏草が生い茂り、
まさに自然農法。
植えられた20種類ほどのハーブには、
それぞれ小さな手書きの看板が添えられており、
そのハーブがどんな効用があって、
どんな料理に合うのか、知ることができます。
滞在中は、自由にハーブを摘んで
お茶に入れたり、ハーブウォーターを作ったり。
早朝、ハーブ園の中に立っているだけで、
いつもより深呼吸の回数が多くなる私でした。
滞在中には、「トレガーアプローチ」という、
体を心地よく揺らす技法を
取り入れたセラピーを受けて、
深部からほぐれる感覚を味わったり、
宿泊棟から徒歩20分ほどにある
無人の「木と人カフェ」で
マクロビおやつを楽しんだり。
最近1ページも読めていなかった小説を、
一気に一冊読み通したり、
貸し切り温泉で一人お湯につかりながら、
湯船の近くに貼られた「温冷浴のすすめ」に
驚いたり(西医学健康法だ!)。
書いているとキリがないのですが、
「一番思い出に残ったのは?」と聞かれたら、
やっぱり「なんにも考えない時間」という
答えになるんじゃないかと思います。

普段の私は、常に何かを考えている状態。
やらなきゃいけない家事や仕事を数え上げ、
24時間の枠にピースをはめ込んでいく毎日。
効率はどんどん良くなりますが、
ギシギシ脳のまま、
何歳まで走り続けられるかな?
そんなことを時折考えます。

穂高養生園には、
色んな選択肢が用意されています。
やるのも自由。やらないのも自由。
やっても、やらなくても、
それがその人の“養生”であれば正解だし、
そうやって得た養生の時間は、
自然治癒力を高めるきっかけになる。
ギシギシ脳から解放されたのは、
ほんの一瞬のことかもしれませんが、
それでも、教えてもらった気がするのです。
あなたが楽になるのは、こういう方法だよ、と。
穂高養生園。
いつか再び訪れる予感が、今からしています。
カテゴリ
プロフィール
- 花澤 久元
-
- 誕生日:1946年11月6日
- 血液型:O型(Rh+)
- 趣味:スイマグ造り卒業、もっか青汁作り
- 自己紹介:
母親に首根っこつかまれて飲んでいたスイマグとの付き合いも早70年。
起きがけのスイマグ飲用を忘れず、青汁作りに精を出し、夕食を待ちこがれる”マイナス腸活”を楽しんでいる。
