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2026.09.11

欧米には健康診断がない?


「欧米には、日本のような健康診断がない」

そんな話を聞いたことはありませんか?

日本では、
会社員であれば

毎年健康診断を受けることが
ごく当たり前になっています。

・身長、体重、血圧
・血液検査
・尿検査
・胸部レントゲン
・心電図

これだけ毎年身体を調べるのですから、

「欧米では毎年健康診断をしない」

と聞けば、

「病気の早期発見はどうするのだろう?」

と不思議に思います。

そこで実際に調べてみました。

結論からいうと、

欧米にも、
健康チェックや
がん検診はあります。

ただ、日本の健康診断とは、
やり方も考え方も違うのです。

 

イングランドは5年に1回

イングランドには、
「NHS Health Check」という
公的な健康チェックがあります。

対象となるのは
原則40~74歳で、

心疾患、糖尿病、高血圧などの
診断を受けていない人です。

健康チェックでは、
心臓病、脳卒中、糖尿病、腎臓病などの
リスクを評価します。

その頻度は原則として、
「
5年に1回」です。

※英国では地域ごとに医療制度が異なり、
「NHS Health Check」は
 イングランド独自の制度です。


ドイツは3年に1回

ドイツにも、
「Gesundheits-Check-up」と呼ばれる
健康チェックがあります。

公的医療保険の加入者であれば、

18~34歳の間に1回、
35歳以上になると3年に1回

受けることができます。

なお、18~34歳の場合、
血液検査は全員対象ではありません。

肥満、高血圧、本人や家族の既往歴など、
リスクが高い人限定で
実施されます。


アメリカでは「検査の科学的根拠を問う」


アメリカにも、
健康チェックそのものはあります。

しかし、
予防医療を考えるうえで
非常に象徴的なのが、

「USPSTF(米国予防医学専門委員会)」
という独立した専門家組織です。

USPSTFは、
症状のない人に行う
さまざまな予防医療について、

「その検査を行うことで、
 本当に患者に利益があるのか」

を科学的根拠に基づいて
評価しています。

評価は非常にはっきりしています。

・評価「A」「B」→推奨

・評価「C」→全員ではなく、その人の状況や希望によって選択

・評価「D」→利益がない、または害が利益を上回るため「推奨しない」

・評価「I」→科学的根拠がまだ十分ではない

ここには、

「検査できるから検査する」
 のではなく、
「検査することに意味があると
 わかっているから検査する」

という考え方があります。

 

イギリス「スクリーニングが常に答えとは限らない」

 

イギリスの
「UK National Screening Committee」は、

国としてどのようなスクリーニングを
実施するかを検討する機関です。

(スクリーニング=現在無症状の人が、特定の病気である可能性を調べる検査)

その基本原則は、

一連の検査・診断・治療による利益が、
害を上回るという証拠がある場合にのみ行う。

という考え方です。

ここでいう「害」とは、

・偽陽性
・過剰診断
・過剰治療
・検査による不安 などです。

イギリス政府の説明には、

「Screening is not always the answer
(スクリーニングが常に答えとは限らない)」

という趣旨の項目まであり、
スクリーニングに対する慎重な姿勢が
うかがえます。

 

健康な人を調べるからこそ、慎重になる


各国が健康診断やスクリーニングに
慎重になる理由を、
少し深掘りしてみましょう。

現在、特に病気の症状を持たない集団
1,000人の中に、

ある病気を持つ人が1%、
つまり10人いるとします。

ある検査の性能が、

・病気の人を正しく陽性にできる確率 90%
・健康な人を正しく陰性にできる確率 95%

だったとします。

数字としてみると、
かなり精度の高そうな検査ですね。

この検査を
1,000人全員が受けると、

病気の10人のうち、
約9人が陽性になります。

一方、
病気ではない990人のうち5%、
約50人も陽性になります。

すると「陽性」と判定された人は、

9人+50人=59人。

59人中、
本当に病気なのは9人です。

陽性になった人の大部分は、
実際には病気ではありません。

これが、
健康な人を大量に検査するときに
起こり得る問題です。

このような
「偽陽性」の問題に限らず、

検査によって
見つかった異常は本物でも、

その人が生涯知らずに
過ごしたとしても

無症状のままだった可能性のある
病変まで見つけ、

本来必要のなかった
検査や治療によって、

身体的・心理的な負担が
生じ
てしまう

「過剰診断」なども
問題視されています。

 

日本の健康診断はなぜ行われる?


日本では、
労働安全衛生規則によって、

事業者は常時使用する労働者に
原則「1年以内ごとに1回」の

定期健康診断を行うことが
義務づけられています。

毎年大量の人が健康診断を受ける
日本の制度は、

欧米と比べて
“遅れている”のでしょうか?

実は、
日本の会社員が受ける
定期健康診断には、

「労働衛生」という
もう一つの役割があります。

厚生労働省は、
定期健康診断の目的について、

労働者の健康状態を把握し、
必要に応じて労働時間を短縮したり、
作業を変えるなどの措置を行い、

脳・心臓疾患の発症や
生活習慣病の悪化を防ぐこと、
などを挙げています。

単に病気を発見するだけでなく、
使用者による労働環境の改善を
重要な目的にしているのです。

 

「検査しない」のではなく、「何を検査するかを選んでいる」

 

こうして各国の制度を見てみると、
米国や英国にも、
予防医療が存在するのがわかります。

ただ、予防医療に向ける視線は、
日本とは少し異なることがわかります。

健康な人に医療行為をするからこそ、
その利益を厳しく問う。

・病気が見つかるか
・見つけたことで治療が変わるか
・治療によって将来が変わるか
・死亡や重い病気が減るか
・利益は、偽陽性や過剰診断、過剰治療などの不利益を上回るか

そこまで考えて、

「誰を、
 何歳から、
 どれくらいの間隔で調べるのか」

を決めています。

ドイツで35歳未満の血液検査を
リスクのある人に絞っていることも、
この考え方が土台にある証です。

 

その予防医療、利益はありますか?

「早期発見、早期治療」

という言葉は、
私たちにはとても馴染みがあります。

毎年の健康診断も、
「病の芽は小さなうちに摘む」
のが目的と考える人は多いでしょう。

ただ、
毎年同じ時期にやってくる健康診断を
漫然と受けているように感じるなら、

「なぜ、この検査を受けるのか」
「自分にとってメリットがあるのか」

を考えてみると、
毎年の健康診断が、
少し違ったものになるかもしれません。

 

参考資料・出典

 

1.NHS(英国国民保健サービス)「NHS Health Check」
イングランドで行われている健康チェック制度について。対象年齢や、原則5年に1回実施されることなどが紹介されています。

2.ドイツ連邦政府 健康情報ポータル「Gesundheits-Check-up für Erwachsene」
ドイツの成人向け健康チェック制度について。18~34歳、35歳以上での検査頻度や内容が説明されています。

3.UK National Screening Committee「Principles of screening」
英国におけるスクリーニングの基本的な考え方を示した資料。検査による利益だけでなく、偽陽性、過剰診断、過剰治療などの不利益も含めて評価するという原則が説明されています。

4.UK National Screening Committee「The pros and cons of screening」
スクリーニングには利益だけでなく不利益もあること、また「検査をすればするほどよい」とは限らないことを一般向けに解説した資料です。

5.U.S. Preventive Services Task Force(USPSTF)「Grade Definitions」
米国における予防医療の推奨基準について。科学的根拠と利益・害のバランスに応じて、A~Dおよび「エビデンス不十分(I)」に分類しています。

6.厚生労働省「労働安全衛生規則」第44条
日本の事業者に、常時使用する労働者への定期健康診断を原則1年以内ごとに1回実施することを定めた法令です。

7.厚生労働省「定期健康診断等の目的、項目の要件」
日本の定期健康診断が、疾病の発見だけでなく、労働者の健康状態の把握や、必要に応じた就業上の措置につなげる役割を持つことが示されています。

※各国で「健康診断」「健康チェック」「スクリーニング」の制度や目的は異なります。
本記事では、それぞれを同一の制度として扱うのではなく、予防医療に対する考え方を比較する目的で紹介しています。

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プロフィール

花澤 久元
  • 誕生日:1946年11月6日
  • 血液型:O型(Rh+)
  • 趣味:スイマグ造り卒業、もっか青汁作り
  • 自己紹介:
    母親に首根っこつかまれて飲んでいたスイマグとの付き合いも早70年。
    起きがけのスイマグ飲用を忘れず、青汁作りに精を出し、夕食を待ちこがれる”マイナス腸活”を楽しんでいる。
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