結局、理想的な体型って? ―「ぽっちゃりの方が長生きする」は本当なのか ―
「若い頃の体重に戻したい」
「お腹まわりが気になる」
「あと3キロ痩せれば、
もっと健康になれるのでは」
体型についての理想は、
人それぞれです。
見た目の美しさを
重視する方もいれば、
健康診断の数値を
気にする方もいるでしょう。
一般的には、
太りすぎは
健康によくないと
考えられています。
ところが近年、
「少し太っている人の方が長生きする」
という研究結果が
注目されるようになりました。
では、健康のためには
少し太っていた方が
よいのでしょうか。
それとも、
やはり標準体重を
維持することが
大切なのでしょうか。
今回は、
2018年から2026年にかけて
発表された研究を中心に、
長寿と健康寿命の両面から
考えてみたいと思います。
1.そもそも「理想体重」はどう決められているのか

体格を評価する際、
広く用いられている指標が
BMI(Body Mass Index)
です。
BMIは、
体重(kg)を身長(m)の
2乗で割って求めます。
例えば、
身長160cm、
体重60kgの場合、
60 ÷(1.6 × 1.6)= 23.4
となります。
日本では、一般的に
BMI18.5未満 = 低体重
18.5以上25未満 = 普通体重
25以上 = 肥満
と分類しています。
その中でも、BMI22は、
従来から標準体重を求める際の
基準として広く用いられてきました。
身長160cmなら、
約56.3kgです。
ただし、
ここで注意したいことがあります。
BMI22は、
すべての年齢の人にとって、
最も長生きできる体重を
意味するわけではありません。
BMIは便利な指標ですが、
筋肉と脂肪の違いを
区別できません。
同じ身長、
同じ体重でも、
筋肉が十分にある人と、
内臓脂肪が多い人では、
身体の状態が
大きく異なる可能性があります。
2.「ぽっちゃりの方が長生きする」は本当だった?

2025年、
学術誌『Experimental Gerontology』に、
アジアの高齢者を対象とした
研究レビューが発表されました。
この研究では、
58件の研究を体系的に検討し、
そのうち35件の縦断研究を
死亡や身体機能の分析に用いています。
その結果、
BMI25~30程度の人で
死亡リスクが比較的低く、
低体重の人では
死亡リスクが高い傾向が
認められました。
研究で用いられた分類では、
過体重の人の死亡リスクは
比較対象群より約19%低く、
低体重の人では
約64%高いという結果でした。
これは、
一般的な「痩せている方が健康」
というイメージとは、
少し異なる結果では
ないでしょうか。
2023年に発表された
オーストラリアと米国の高齢者
約18,000人の研究でも、
男性ではBMI25~29.9の群で
死亡リスクが低い傾向が
認められています。
ただし、
これらは主に
高齢者を対象とした
観察研究です。
若い世代にも
同じ結果が
当てはまるとは限りませんし、
体重を増やすことによって
寿命が延びると
証明したものでもありません。
それでも、
特に高齢期には
「痩せているほどよい」
とは言えないことが、
研究から見えてきます。
3.ところが「長生き」と「健康寿命」は違う

ここからが、
今回最もお伝えしたい部分です。
2024年、
早稲田大学などの研究グループが、
日本人高齢者10,232人を対象とした
研究を発表しました。
この研究では、
BMIと介護が必要になるリスク、
さらに介護が必要になってからの
生存期間との関係を調べています。
その結果、
BMI22.5~23.5付近で
介護認定を受けるリスクが
最も低いことが示されました。
一方、
BMI27.5以上の人では、
BMI21.5~24.9の人と比較して、
介護が必要になるリスクが
27%高くなっていました。
また、
BMIの高い人は、
介護が必要な状態で過ごす期間が
長くなる傾向も認められました。
つまり、
BMIが高めの人は
長く生きる場合があっても、
その期間をすべて
健康に過ごせるとは
限らないのです。
もっとも、
2019年に発表された
別の日本人高齢者12,666人の研究では、
BMI25~27で、
要介護または死亡に至るまでの期間が
最も長いという結果も
報告されています。
研究によって
最適とされるBMIが異なるのは、
対象者の年齢や健康状態、
健康寿命の測定方法などが
違うためと考えられます。
現時点で、
すべての人に共通する
「健康寿命が最も長くなるBMI」を、
一つの数字で示すことはできません。
4.体重よりも「お腹まわり」が重要?

2026年には、
さらに興味深い研究が
発表されました。
米国の65歳以上の高齢者
6,905人を対象に、
BMIと腹囲の両方を調べ、
死亡リスクとの関係を
分析した研究です。
この研究でも、
BMIが高めの人で
死亡リスクが低い傾向が
認められました。
しかし、
腹囲が大きい人では、
BMIとは独立して
死亡リスクが約24%
高くなっていました。
つまり、
同じBMIであっても、
お腹まわりに
脂肪が多いかどうかによって、
健康リスクが異なる
可能性があるのです。
内臓脂肪の蓄積は、
インスリン抵抗性や
慢性的な炎症などと関係し、
糖尿病や心血管疾患の
リスクにも影響します。
また、
2025年に
『The Lancet Diabetes & Endocrinology』
で発表された
国際的な専門家委員会の報告でも、
肥満の評価にはBMIだけでなく、
体脂肪の蓄積や分布、
臓器機能への影響などを
考慮すべきだと
提言されています。
同じ体重でも、
筋肉が多い人と
内臓脂肪が多い人を、
同じように評価することは
できないということです。
5.なぜ、少し太っている高齢者の方が長生きするのか

その理由については、
いくつかの可能性が
考えられています。
一つは、
身体の予備力です。
高齢になると、
病気や食欲低下によって
体重が減少しやすくなります。
そのようなとき、
ある程度の栄養状態や
筋肉量が保たれていることは、
身体の機能を維持するうえで
有利に働く可能性があります。
一方で、
病気によって
体重が減少した人が
「標準体重」や「低体重」の群に
含まれることで、
痩せている人の
死亡リスクが高く見える
場合もあります。
2018年の
フラミンガム研究では、
調査時点の体重だけでなく、
過去24年間の
体重履歴を考慮して
分析しています。
その結果、
肥満度が高いほど
死亡リスクが上昇する傾向が認められ、
単純な「ぽっちゃり長寿説」には
注意が必要であることが
示されました。
つまり、
少し太っている人が
長生きするという
統計があっても、
脂肪を増やせば
健康になるという
意味ではありません。
6.結局、理想的な体型とは?

ここまでの研究を整理すると、
次のようなことが見えてきます。
まず、痩せすぎは、
特に高齢期において
注意が必要です。
体重の減少とともに
筋肉量が低下すると、
歩行能力や日常生活の機能が
損なわれる可能性があります。
一方、
BMIが多少高くても、
直ちに不健康とは限りません。
しかし、
内臓脂肪が
過剰に蓄積していたり、
身体機能が
低下していたりする場合には、
健康上の問題が
生じる可能性があります。
そのため、
体型を考えるときには、
体重だけでなく、
次のような点にも
目を向けたいものです。
・筋肉量や筋力が維持されているか
・お腹まわりに脂肪が増えすぎていないか
・食事から必要な栄養を摂取できているか
・無理なく歩き、日常生活を送れているか
・血圧、血糖、脂質などに問題がないか
特に高齢期には、
体重を減らすことだけを
目標にするのではなく、
筋肉や身体機能を守る視点が
欠かせません。
理想的な体型とは、
見た目の細さだけで
決まるものではありません。
健康のために目指したいのは、
単に「痩せた身体」ではなく、
年齢を重ねても
元気に動ける身体です。
参考文献
1. Shin HE, et al.(2025)
Obesity indicators and risk of mortality and functional health outcomes in Asian community-dwelling older adults: A systematic review and meta-analysis.
Experimental Gerontology.
2. Watanabe D, et al.(2024)
Is a higher body mass index associated with longer duration of survival with disability in frail than in non-frail older adults?
International Journal of Obesity.
3. Xu F, et al.(2026)
Time-Varying Body Mass Index, Waist Circumference and All-Cause Mortality in US Adults Aged 65 or Older.
Journal of the American Geriatrics Society.
4. Watanabe D, et al.(2024)
Frailty modifies the association of body mass index with mortality among older adults: Kyoto-Kameoka study.
Clinical Nutrition.
5. Ohsaki Cohort 2006 Study(2019)
The relationship between body mass index and disability-free survival in elderly Japanese.
6. Framingham Heart Study(2018)
Association of Obesity With Mortality Over 24 Years of Weight History.
JAMA Network Open.
7. Rubino F, et al.(2025)
Definition and diagnostic criteria of clinical obesity.
The Lancet Diabetes & Endocrinology.
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プロフィール
- 花澤 久元
-
- 誕生日:1946年11月6日
- 血液型:O型(Rh+)
- 趣味:スイマグ造り卒業、もっか青汁作り
- 自己紹介:
母親に首根っこつかまれて飲んでいたスイマグとの付き合いも早70年。
起きがけのスイマグ飲用を忘れず、青汁作りに精を出し、夕食を待ちこがれる”マイナス腸活”を楽しんでいる。

